親の介護で「イライラする」「しんどい」「疲れた」と感じたことはありませんか?
医療の現場で長く勤務していると、こんなお声をよく聞きます。
患者さん家族・つい強い口調で言ってしまい、後で自己嫌悪になる
・仕事や家事もあるのに、介護まで手が回らない
・誰にも頼れず、一人で抱え込んでいる気がする
イライラしてしまうのは、自然なことです。多くの介護者が経験することです。
ただ、一人で抱え込み続けると心身の負担が大きくなり、介護うつや介護離職につながることもあります。
大切なのは、イライラする自分を責めることではなく、介護負担を減らす方法を知ることです。
介護保険サービスや見守りサービスを上手に使えば、親を大切にしながら自分の時間にも余裕が持てます。
私は総合病院で30年以上働く看護師です。自分自身も高齢の親を支える立場として、「親だからこそ感情的になってしまう苦しさ」を実感してきました。
この記事では、イライラの理由と対処法、一人で抱え込まないための制度やサービスを、看護師と家族介護、両方の視点から解説します。
読み終える頃には「一人で頑張らなくていい」と感じられるでしょう。
- 親の介護でイライラしてしまう6つの理由
- 親の介護にイライラしたときの対処法7つ
- 親の介護で限界を感じる前に知っておきたいこと
- 親も自分も大切にする介護の考え方
・看護師歴30年以上
・総合病院で勤務
・新生児から高齢者まで幅広く経験
現在は入退院支援を担当し、医療と介護の橋渡しをしています。
80代の両親とは離れて暮らし、気にかけながら働く日々。
同じ50代の方へ、医療や介護、離れて暮らす親のサポートに役立つ情報を発信しています。詳しいプロフィール


親の介護でイライラするのはあなただけではありません
親の介護が「しんどい」「疲れた」とイライラするのは自然なことです。介護をしている方の多くが同じ気持ちを抱えています。
少し前のデータですが、厚生労働省の「国民生活基礎調査(平成28年)」では、同居して介護をしている方のうち、悩みやストレスが「ある」と答えた人は男性で約6割、女性では約7割にのぼると報告されています。
介護をしている人の大多数が、何かしらの重荷を感じながら毎日を送っています。
さらに、日本は高齢化が進み、老々介護も増えています。介護をする側・される側がともに高齢化する今、この悩みやストレスはより深刻になっていると考えられます。
介護で感じるイライラは、心の弱さではなく、体と心が出している自然な反応です。
睡眠が削られ、休みの日も気が休まらず、先の見通しも立たない。そんな状態が続けば、どんなに穏やかな方でも感情のコントロールは難しくなります。
実際、私自身にも同じことが起きます。夜勤が続いて疲れがたまった状態で帰宅すると、患者さんには保てていた気遣いが、家族にはできなくなってしまう。
遠慮のない相手だからこそ、些細なことでイライラをぶつけてしまうのです。
「イライラしてしまうのは自分だけ」と思い込んでしまうと、誰にも言えず、ますます一人で抱え込んでしまいます。
まずは、その思い込みをそっと手放すところから一緒に始めましょう。親の介護が「しんどい」「疲れた」とイライラするのは自然なことです。
ここからは、親の介護でイライラしてしまう理由を、具体的に見ていきます。
親の介護でイライラしてしまう6つの理由
イライラには必ず理由があります。理由がはっきりすると、「自分が悪いから」ではなく「この状況だからイライラするのだ」と切り分けられるようになります。
現場でご家族からよくうかがう理由を、6つに整理しました。
・認知症や物忘れで同じことを繰り返すから
・仕事・家事・介護の両立で余裕がないから
・兄弟姉妹の協力が得られないから
・介護の終わりが見えず不安だから
・親の老いを受け入れられず悲しくなるから
・親に冷たい態度を取ってしまい罪悪感を抱くから
当てはまるものがないか、上から順番に見ていきましょう。
認知症や物忘れで同じことを繰り返すから
同じ話を何度も繰り返されてイライラするのは、介護をしている方がもっとも多く口にされる理由です。
うちの母も、ご近所さんとの世間話を、家に帰ってから何度も話します。
「〇〇さんの息子さんが〜」という同じ話を、10分後にはまた初めて話すように始める。
「その話、さっき聞いたよ」と言いかけて、飲み込む。そんなやり取りが1日に何度もあります。
頭では「病気のせい」と分かっていても、心が追いつかないのです。
認知症の物忘れは、「さっき話した」という記憶そのものが残りにくいという特性があります。ご本人にとっては、毎回が「はじめて話す出来事」のように感じられることも珍しくありません。
何度も同じ話をするのは、あなたを困らせたいからでも、わざとでもありません。
とはいえ、繰り返されるのは家族としてもしんどいものです。
程よく話を聞いたら、話題を変えてみましょう。「そういえばお茶にしようか」と別の行動に誘うと、案外すんなり気持ちが切り替わります。



親の話を、受け流す自分を責めないでくださいね!
仕事・家事・介護の両立で余裕がないから
時間と体力に余裕がないことが、イライラの土台をつくっています。
50代は、仕事では責任のある立場になり、自分の家庭のことも回さなければならない年代です。そこに親の介護が加わると、自分のために使える時間がほとんど残りません。
朝は自分の支度をしながら親に電話し、昼休みにケアマネジャーへ連絡、通院の日は仕事のスケジュールを調整して付き添う。
仕事のない週末は親の様子を見に実家に行く。自分のことは、全て後回し状態ですね。
この状態は、気合いや性格ではどうにもなりません。「頑張り方」を変えるのではなく、「やることの量」を減らす必要があります。具体的な方法は、後の章で詳しくお伝えします。
兄弟姉妹の協力が得られないから
介護の負担がひとりに偏っていることも、大きなイライラの原因です。
「近くに住んでいるから」「女性だから」という理由で、なんとなく一人に役割が集まってしまう。
たまに顔を出した兄弟から「もっとこうしたら?」と口だけ出される。これは、現場で本当によく聞くお話です。
このとき起きているのは、親へのイライラというより、家族へのやりきれなさです。
一人で抱え込んでしまう方は、真面目で責任感が強く、弱音を吐くのが苦手な傾向があります。「自分がやらなきゃ」と思うほど、誰かに頼るという発想が浮かびにくくなるのです。
兄弟姉妹にも、それぞれの家庭の事情があります。無理に均等に分担するのは難しいかもしれません。
それでも、「何をどれだけやっているか」を書き出して共有し、できる範囲で協力をお願いしてみることはできます。
感情的にならず、「事実」として伝えるだけで、相手の反応も変わってくるものです。
介護の終わりが見えず不安だから
ゴールが見えないことは、それ自体が強いストレスになります。
仕事なら締め切りがあり、子育てなら少しずつ手が離れていきます。ところが介護は、いつまで続くのか誰にも分かりません。しかも多くの場合、親の状態は少しずつ悪くなっていきます。
「この生活があと何年続くのだろう」という不安は、口に出しにくい分だけ、心の奥にたまっていきます。そして、ふとした場面でイライラとして噴き出してしまうのです。
親の老いを受け入れられず悲しくなるから
イライラの奥には、「悲しみ」が隠れていることがあります。
しっかり者だった母が、同じ服を何日も着ている。几帳面だった父が、家の中を散らかしたままにしている。その姿を見たとき、私たちは「どうしてできないの」と強い言葉をぶつけてしまいがちです。
私の父も、祖母の老いを受け入れられず、つい強い口調になってしまうことがありました。
女手ひとつで子どもたちを育て上げた、しっかり者で優しかった祖母。年齢を重ねて少しずつできないことが増えていく姿を、父は冷静に受け止められなかったのです。
後になって叔母からも「私も同じだったよ」と聞き、実の親だからこそ感情的になってしまうことがあるのだと感じました。
看護師として30年以上、多くのご家族と関わってきましたが、この「本当は悲しいのに、怒りとして出てしまう感情」は、親子だからこそ生まれやすいものだと感じています。
「私は悲しいんだな」と、自分の気持ちを言葉にしてみてください。怒りの奥にある感情に気づくだけでも、不思議と心は少し軽くなり、親への接し方も変わっていきます。
親に冷たい態度を取ってしまい罪悪感を抱くから
ついイライラして、「何度もうるさい」「なんでそんなこともできないの」と口にしてしまう。そして、その直後に押し寄せるのが、強い罪悪感です。
言った瞬間は気持ちが少し楽になったように感じても、その後に残るのは後悔ばかり。「あんな言い方をしなければよかった」と、何度も同じ場面を思い返してしまう方もいるでしょう。
さらに、この罪悪感は次のイライラを生む原因にもなります。「また同じことを言ってしまうかもしれない」という不安が心に積み重なり、優しく接したいのにできない自分を責め続けてしまうのです。
罪悪感を抱くのは、親を大切に思っているからこそ。どうでもいい相手なら、後悔することも、自分を責めることもありません。
まずは、「こんなに頑張っているんだ」と、少しだけ自分を認めてあげてください。自分を責める気持ちが和らぐと、親への接し方も少しずつ変わっていきます。
親の介護にイライラしたときの対処法7つ
イライラの理由が分かっても、それだけでは気持ちは軽くなりません。大切なのは、「じゃあ、どうすればいいのか」という具体的な対処法です。
ここでは、看護師として、そして一人の介護者として実践してきた対処法を、7つに整理しました。気持ちの持ち方を変えるものから、負担そのものを減らすサービスまで、幅広くご紹介します。
- 完璧な介護を目指さない
- 一度その場を離れて気持ちを落ち着ける
- 親との適度な距離を保つ
- 自分の時間を確保する
- 家族や専門職へ相談する
- 介護保険サービスを利用する
- 見守り・宅配サービスを活用する



すべてを完璧にやろうとする必要はありません。「これならできそう」と思うものから、ひとつずつ試してみてください。
では、順番に見ていきましょう。
完璧な介護を目指さない
栄養バランスの整った手作りの食事、いつも片づいた部屋、毎日の電話。すべてを完璧にこなそうとすると、できなかった日に自分を責めることになります。
現場で見ていて、長く介護を続けられているご家族には共通点があります。それは「手を抜くところを決めている」ことです。
命に関わること(薬・食事・水分・危険の回避)は押さえて、それ以外は6割でよしとする。この線引きが、介護を長続きさせます。
たとえば食事は、毎日手作りにこだわらなくても大丈夫です。掃除は毎日ではなく2〜3日に一度にする。毎日の電話も、必ずしも自分でかけ続けなくて構いません。
手を抜けるところは、思っている以上にたくさんあります。それぞれの具体的な方法は、後の章で詳しくお伝えします。



完璧を目指さないことは、手抜きではなく、親の介護を続けるための工夫です。
一度その場を離れて気持ちを落ち着ける
イライラが爆発しそうなときは、いったんその場を物理的に離れるのがいちばん確実です。
アンガーマネジメントの分野では、「怒りのピークは6秒」ともいわれています。この数秒をやり過ごせば、同じ場面でも言葉のきつさは変わります。
- 「お茶を入れてくるね」と言って台所に立つ
- 洗面所で手を洗い、冷たい水で顔や手首を冷やす
- 玄関の外に出て、深呼吸を3回する
- ゴミ出しを口実に、5分だけ外を歩く
「その場を離れるなんて冷たいのでは」と思われるかもしれません。けれど、きつい言葉をぶつけてしまうより、離れて落ち着いてから戻るほうが、親にとってもずっと優しい選択です。
親との適度な距離を保つ
近すぎる距離は、お互いを傷つけます。適度な距離を保つことは、関係を守る工夫です。
毎日実家に通っている方は、思いきって週3回にしてみる。長電話がつらいなら「15分だけね」と最初に伝える。同居されている方なら、自分の部屋で過ごす時間を決める。
離れて暮らしている場合は、「毎日確認しなければ」という不安が距離を縮めさせます。この不安を減らすには、見守りサービスなどの仕組みに任せてしまうのが有効です。詳しくは後ほどお伝えしますね。
自分の時間を確保する
介護をしていると、「自分の時間」は後回しになります。けれど、自分のための時間がゼロの状態が続くと、心の余裕もゼロになります。
大きな時間を作る必要はありません。1日15分でも、「介護から離れて、自分に戻る時間」を意識的に確保することが大切です。
・友人とお茶をして、誰かに話を聞いてもらう
・好きな音楽を聴きながら湯船につかる
・15分だけ、介護と関係のない本や雑誌を読む
・自宅でできる趣味を持つ
「そんな時間、今の自分にはない」と感じるかもしれません。けれど、自分を後回しにし続けた先に待っているのは、共倒れです。



自分の時間を持つことは、わがままではなく、あなた自身を守るための時間です。
家族や専門職へ相談する
話すことそのものに、気持ちを軽くする力があります。
まだ介護保険の申請をしていない方は、まず地域包括支援センターに相談してみてください。
介護の悩みは、認定が下りる前でも聞いてもらえます。「申請すべきか迷っている」という段階からのご相談で大丈夫です。
「こんな愚痴を言っても仕方ない」と思わずに、ケアマネジャーや訪問看護師、地域包括支援センターの職員に話してみてください。
私たち専門職は、解決策を出すためだけにいるのではありません。お気持ちをうかがうことも、大切な仕事のひとつです。
また、「介護者の会」「家族会」といった、同じ立場の方が集まる場もあります。同じ経験をした人にしか分からない話ができる、貴重な居場所です。お住まいの地域の会は、地域包括支援センターで教えてもらえます。
介護保険の申請方法については「突然の親の介護」何から始める?介護保険の基本と相談窓口を解説を参考にしてください。
介護保険サービスを利用する
「まだ自分でできる」「他人に頼るのは申し訳ない」と感じる方ほど、介護保険サービスを使わずに一人で抱え込みがちです。
介護保険サービスは、家族の代わりに親を支えてくれる心強い味方です。
- 日中を専門職に任せられる(入浴・食事・レクリエーション)
- 親御さんの生活リズムが整う
- 家族にとっても「介護から離れる時間」になる
- 見学だけ、週1回だけ、など小さく始められる
デイサービスは、日中の数時間、親を専門職に任せられるサービスです。
「本人が嫌がるから」とあきらめている方も多いのですが、最初の見学だけ一緒に行ってみる、週1回から始めてみるなど、進め方はいろいろあります。
- ホームヘルパーが自宅に来て、身体介護や生活援助をしてくれる
- 入浴・排泄・食事などの介助を任せられる
- 掃除・洗濯・買い物など、生活面のサポートも頼める
- 通院や外出が難しい親御さんの生活を支えられる
訪問介護は、「デイサービスには行きたがらないけれど、自宅での生活に不安がある」という場合の選択肢になります。利用回数や内容は、ケアマネジャーと相談しながら決めていけます。
- 数日〜1週間、施設に宿泊しながら介護を受けられる
- 入浴・食事・服薬管理も施設側にお任せできる
- 介護者が体調を崩したときや、休養したいときに使える
- 配偶者の入院など、急な対応が必要なときの受け皿になる
ショートステイは、数日から1週間程度、親に施設へ泊まってもらえるサービスです。
「もう自分が倒れそう」と感じたときの、いちばん強い味方だと思ってください。介護をする側が休むために使っていいサービスで、これは制度としてきちんと認められています。
たとえば、自分自身が体調を崩して寝込んでしまったとき。あるいは、もう一方の親が急に入院することになったとき。そんな「まさか」のときも、ショートステイがあれば、親の生活を途切れさせずに済みます。
どちらも、ケアマネジャーに相談すれば、ご本人の状態に合わせて利用回数や頻度を提案してもらえます。



サービスを使うことは、あなたと親を守り、介護を長く続けるための選択です。
見守り・宅配サービスを活用する
- 毎日電話しても出てくれない
- 毎週末、実家に様子を見に行くのは正直しんどい
そんな負担を減らしてくれるのが、高齢者見守りサービスです。
見守りサービスは、センサーやカメラ、緊急通報ボタンなどで、離れて暮らす親御さんの様子を確認できるサービスです。
「今日も元気にしているか」を毎回電話で確認しなくても、異変があればすぐに気づける仕組みが整います。サービスによって機能や料金はさまざまなので、比較しながら選ぶのがおすすめです。
宅配食は、栄養バランスの取れた食事や、持病に合わせた塩分・カロリー制限食を、自宅まで届けてくれるサービスです。
毎日の献立や買い物、調理の負担を減らせるだけでなく、栄養管理はプロに任せられる安心感もあります。
どちらも「頼ること」への罪悪感を感じる方が多いのですが、家族が無理なく介護を続けるための、立派な選択肢のひとつです。
高齢者見守りサービスの種類について詳しく知りたい方はこちらをあわせてご覧ください。
【現役看護師徹底解説】高齢者見守りサービスおすすめランキング
宅配食は種類が多く、味も量も想像しづらいですよね。私も気になって、実際に一社取り寄せて食べてみました。ご参考まで。
【ウェルネスダイニング】高齢者におすすめ宅配食を看護師が実食
親の介護でしんどい・疲れた…限界を感じる前に知っておきたいこと
親の介護で「疲れた」「しんどい」と感じているなら、限界を迎える前に知っておいてほしいことが3つあります。
- 介護ストレスが限界に近づいているサインを知っておく
- 一人で抱え込むことが危険な理由を知っておく
- 介護うつにつながることを知っておく
これまでの対処法を試しても辛さが続く場合、それは心と体からの大切なサインかもしれません。一つずつ、詳しく見ていきましょう。
介護ストレスが限界に近づいているサインを知っておく
次のようなサインが出ていたら、心と体はすでに悲鳴を上げています。
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める、朝すっきり起きられない
- 食欲がない、または食べすぎてしまう
- 頭痛・肩こり・めまい・動悸など、体の不調が続いている
- 好きだったことが楽しめない、テレビを見ても頭に入らない
- 涙が急に出る、理由もなく気持ちが落ち込む
- 親の声を聞くだけで体がこわばる、実家に向かう足が重い
- 手が出そうになった、強い言葉が止められなかったことがある
- 「消えてしまいたい」と思うことがある
いくつも当てはまる方は、「気のせい」で片づけないでください。とくに最後の2つに心当たりがある場合は、今すぐ誰かに助けを求めていただきたい状態です。



ケアマネジャーや地域包括支援センター、かかりつけ医など、身近な専門職に今の状態をそのまま伝えてください。一人で抱え続けないでください。
一人で抱え込むことが危険な理由を知っておく
一人で抱え込む介護は、親にとってもリスクになります。
厚生労働省が毎年公表している高齢者虐待の調査(令和6年度)では、家族など養護者による虐待が起きた要因として、「介護疲れ・介護ストレス」がもっとも多く、57.2%を占めています。
厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」
つまり、追いつめられた介護者ほど、望まない形で親を傷つけてしまう危険が高まるということです。
これは「ひどい家族」の話ではありません。まじめで責任感が強く、誰にも頼らずに頑張ってきた方ほど起こりやすいのです。
誰かに頼ることは、親を守ることでもあります。この視点を、どうか忘れないでください。
介護うつにつながることを知っておく
介護ストレスを放置すると、うつ状態に進むことがあります。
眠れない、食べられない、何をしても楽しくないという状態が2週間以上続いているなら、心療内科や精神科の受診を考えてください。「これくらいで病院に行くなんて」と我慢せず、早めに受診してください。
どこに相談したらよいか分からない場合は、地域包括支援センターや、お住まいの自治体の保健センターでも相談できます。
厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)なら、全国共通の電話番号から、お住まいの地域の公的な相談窓口につながります。家族が相談することもできる窓口です。



介護をする方が倒れてしまえば、その介護は続きません。あなたの健康を守ることが、親の生活を守ることに直結します。
親も自分も大切にする介護を目指しましょう
ここまで、イライラの理由や対処法、頼れるサービスについてお伝えしてきました。最後に、看護師としてではなく、一人の介護者として、どうしてもお伝えしたいことがあります。
それは、介護のために、あなた自身の人生を差し出さないでほしいということです。
「介護があるから」と、築いてきたキャリアを諦めそうになる方がいます。そんなときは、介護休業制度の利用を考えてみてください。仕事を続けながら介護と向き合う方法は、諦める前に必ずあります。
また、「親のために」と頑張るあまり、自分の配偶者や子どもとの時間が後回しになっていませんか。あなたが大切にしてきたご自身の家庭も、親と同じくらい大切にしてほしいのです。
子育てが一段落し、ようやく自分の時間を取り戻せるはずだったこの時期に、親の介護が重なる方も少なくありません。それでも、これから始まる人生の後半戦を、介護だけで埋め尽くさないでください。
介護は、どちらかが犠牲になって成り立つものではありません。親も自分も大切にする介護が、いちばん長く続きます。
介護休業制度について詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
介護で仕事を辞めるべき?・離職を防ぐために知っておきたい制度と選択肢
親の介護のイライラについてよくある質問
- 親の介護は何年くらい続きますか?
-
生命保険文化センターの「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、介護を行った期間の平均は55.0か月(4年7か月)で、4年を超えて介護した人が約4割でした。もちろん、10年以上続く方も少なくありません。期間は誰にも予測できないため、「短期決戦で乗り切る」のではなく、長く続くことを前提にサービスを組み込んでおくことが大切です。
- 親の介護でやってはいけないことはありますか?
-
いちばん避けたいのは、一人で抱え込むことです。次に、仕事を勢いで辞めてしまうこと、そして「自分が我慢すればいい」と限界まで頑張ってしまうことです。どれも、結果として親御さんの生活を不安定にしてしまいます。
- 介護がめんどくさいと感じるのは普通ですか?
-
普通です。介護は毎日続く実務であり、疲れれば「めんどくさい」と感じるのは当たり前の反応です。その気持ちが強くなっているときは、あなたの心のコップがいっぱいになっているサインだと受け止めて、休息や相談につなげてください。
- 認知症の母にイライラしてしまいます、どうしたらいいですか?
-
認知症の症状に「正しさ」で向き合うと、お互いに疲れてしまいます。同じ話を否定せずに聞き流す、その場を一度離れる、といった工夫が有効です。そのうえで、デイサービスなどで物理的に離れる時間をつくることが、いちばん現実的な対処法になります。ケアマネジャーに相談してみてください。
- 仕事と介護は両立できますか?
-
できます。ただし、一人で背負ったままでは難しいのが実際です。介護保険サービス、勤務先の介護休業・介護休暇制度、見守りや宅配食などの民間サービスを組み合わせることが前提になります。まずは勤務先の制度を確認し、地域包括支援センターに相談してみてください。
- 親の介護でメンタルがやられそうです、どうしたらいいですか?
-
眠れない・食べられない・何も楽しめないという状態が2週間以上続いているなら、心療内科や精神科の受診を検討してください。受診に迷う場合は、地域包括支援センターや自治体の保健センターでも相談できます。厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)でも相談窓口が案内されています。
- 介護ストレスをチェックする方法はありますか?
-
介護者の負担度を測る「Zarit介護負担尺度」という、医療・介護の現場で広く使われている専門的なチェック方法があります。ご自身の状態が気になる方は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するといいでしょう。
【まとめ】親の介護でイライラしても、自分を責めないでください
親の介護でイライラしたり、「しんどい」「疲れた」と感じたりするのは、決して特別なことではありません。親を大切に思うからこそ、心にも体にも負担が積み重なり、感情があふれてしまうことがあります。
大切なのは、そのイライラを自分の中に溜め込まず、負担そのものを減らしていくことです。
親の介護にイライラしたときの対処法7つ
- 完璧な介護を目指さない
- 一度その場を離れて気持ちを落ち着ける
- 親との適度な距離を保つ
- 自分の時間を確保する
- 家族や専門職へ相談する
- 介護保険サービスを利用する
- 見守り・宅配サービスを活用する
あなたの人生は、あなたのものです。
親を大切にすることと、自分の人生を大切にすることは、両立できます。むしろ、あなたが笑顔でいられることが、親御さんにとっていちばんの安心なのです。
今日から、できることを一つだけ始めてみませんか。
あなたが少しでも穏やかな気持ちで、親御さんと向き合える日が増えますように。そっと応援しています。
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