最近、ご近所の高齢者が倒れて救急搬送された。そんな話を聞き、「うちの親も一人暮らし。何か備えた方がいいのでは」と心配になる方もいるでしょう。
そんなときに知っておきたいのが「救急医療情報キット」です。
私は総合病院で30年以上働く看護師として、救急時に持病や薬の情報を確認できる大切さを感じてきました。
救急医療情報キットは、医療情報や緊急連絡先をまとめて備えるものです。この記事では、中身・作り方・冷蔵庫に置く理由まで解説します。
親のもしもに備えて、必要な情報をすぐ確認できるようにしておきましょう。

・看護師歴30年以上
・総合病院に勤務
・新生児から高齢者まで幅広く看護
・入退院支援で医療・介護・地域連携を経験
看護師として突然介護が始まるご家族を見てきた経験から、同世代の方に今からできる備えを伝えています。
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救急医療情報キットとは?役割と冷蔵庫に保管する理由

救急医療情報キットは、本人が説明できないときに、持病や薬、緊急連絡先などを救急隊へ伝えるための備えです。
情報を書いた用紙を容器に入れ、冷蔵庫で保管します。
多くの自治体が、ひとり暮らしの高齢者などに無料で配布しています。呼び方は「救急情報キット」「安心キット」など、地域によって違います。
救急医療情報キットに入れる6つの情報
キットに入れる紙には、次の6つを書きます。
| 準備するもの | 何に使われるか |
|---|---|
| 持病(病歴) | 倒れた原因を予測する |
| お薬手帳のコピー | 持病の予測と、処置の判断 |
| アレルギー | 使用できない薬などの判断 |
| かかりつけ医 | 搬送先の候補と情報提供依頼 |
| 家族の緊急連絡先 | 治療はご本人と家族への説明が必須 |
| 介護保険証の写し | 介護度の確認 |
救急隊は搬送先の医療機関へ、年齢や症状、持病、服薬状況など、現場で確認できた情報を伝えます。
たとえば、「70代男性。狭心症と糖尿病の既往があり、○○を内服中。現在、胸の痛みを訴えている」といった内容です。
持病や薬の情報が分かると、症状の原因や注意すべき点を考える手がかりになります。搬送先で検査や治療を進めるうえでも大切な情報です。
かかりつけ医の情報も重要です。必ずしも搬送先になるわけではありませんが、これまでの病歴や治療内容について確認が必要なとき、情報提供を依頼する手がかりになります。
救急医療情報キットを冷蔵庫に置く3つの理由
冷蔵庫が選ばれているのは、下記の3つの理由からです。
- どこの家にも1台はある:救急隊が見つけやすい
- 作りが丈夫:地震などで家の中が散らかっても、中身が残りやすい
- 家族以外が開けにくい:人目につきにくい場所に置ける
冷蔵庫に保管場所を決めておけば、救急隊は処置をしながら必要な情報を確認できます。持病や薬などを早く把握できるため、搬送先への情報共有がスムーズになり、その後の診療にもつながります。
目印のシールはどこに貼る?玄関の内側と冷蔵庫が目印
キットを用意したら、目印のシールを2か所に貼ります。
多くの自治体が貼る場所を指定しており、そこには防犯の理由があります。
| 貼る場所 | なぜそこか |
|---|---|
| 玄関ドアの内側の上部 | 家に入った救急隊がすぐ気づく。外側に貼らないのは、高齢者のひとり暮らしだと外から知られるおそれがあるため |
| 冷蔵庫の扉の外側 | キットがこの中にあると分かる |
調布市や西東京市をはじめ、多くの自治体が「犯罪や悪質な訪問販売を誘発する可能性がある」として内側を指定しています。
救急医療情報キットの対象者は?配布条件と入手方法

救急医療情報キットは、すべての自治体で同じ条件で配布されているわけではありません。
対象となる人や申請方法、受け取れる場所は地域によって異なります。まずは、親が住んでいる自治体の案内を確認してみましょう。
対象者|自治体によって条件が異なる
対象の条件は、市区町村ごとに決められています。実際に3つの自治体を調べたところ、次のように違いました。
千代田区と豊島区は、65歳以上であれば対象になります。吹田市は「ひとり暮らしの高齢者等」と条件がついています。
配布条件は自治体ごとに異なるため、まずは親が住んでいる自治体のホームページで確認しましょう。
入手方法|配布場所と申請方法を確認する
親の住む自治体で配布しているかどうかは、次の順番で調べると早く分かります。
配布している自治体なら、対象者や申請先、受け取り方法がホームページに掲載されています。
「救急医療情報キットについて確認したい」と伝えれば、担当部署につないでもらえます。
担当は自治体でまったく違います。豊島区は高齢者福祉課、習志野市は消防署が窓口です。
申請できる人にも差があり、習志野市では家族が代理で申請し、受け取れます。親が窓口へ行けなくても手続きが可能です。
帰省の予定があるなら、その前に家族でも申請できるか確認しておくとよいでしょう。
救急医療情報キットの作り方|100円ショップの材料でそろう
親の住む自治体で配布していなくても、救急医療情報キットは自分で作れます。吹田市や国立市などが作り方を公開しており、材料は100円ショップでそろいます。

救急医療情報キットは、身近な材料で作れます。作り方は、ペットボトルを使う方法と、チャック付き袋を使う方法の2通りです。
どちらも100円ショップや、家にあるもので準備しやすい材料です。

救急時に必要な情報を用紙へ書きます。自治体が記入用紙を公開していれば、印刷して使えます。用紙がない場合は、必要な項目を手書きでまとめてもかまいません。
- 持病・これまでの病歴
- 飲んでいる薬(お薬手帳のコピーでも可)
- アレルギー
- かかりつけ医
- 家族などの緊急連絡先
- 介護サービスや要介護度など、必要な介護情報
救急時に見てすぐ分かるよう、できるだけ簡潔にまとめておきましょう。

情報を書いたら、用紙をひとまとめにします。作り方によって、ここから手順が分かれます。
ペットボトル型:記入した用紙をクリアファイルに入れます。クリアファイルをペットボトルに巻き、輪ゴムで留めれば完成です。
チャック付き袋型:記入した用紙をチャック付き袋に入れます。冷蔵庫の外側に貼る場合は、袋にマグネットを付けて使います。
現金・預金通帳・印鑑などの貴重品は、キットに入れないでください。国立市も、貴重品はキットに入れないよう案内しています。

最後に、キットの保管場所を決めます。作り方によって、保管のしかたが少し異なります。
ペットボトル型:冷蔵庫の中や、内側のドアポケットに立てて保管します。
チャック付き袋型:マグネットを使い、冷蔵庫の外側に貼る方法があります。
作って終わりにしない|定期的に見直す
救急医療情報キットは、作って終わりではありません。薬が追加・変更されたときなどに、内容を見直しましょう。
国立市も、記入した情報に変更が生じた場合は、訂正・追記するよう案内しています。
古い情報のままでは、救急時に現在の状況が正しく伝わらない可能性があります。薬だけでなく、持病やかかりつけ医、緊急連絡先に変更がないかも確認しておくことが大切です。
離れて暮らす親の場合は、帰省したときに一緒に確認するのもよいでしょう。薬や通院先の変化を知ることで、親の体調や生活の変化に気づくきっかけにもなります。
いざというときに役立つよう、親の今の状態に合わせて情報を更新しておきましょう。
マイナ救急があれば、救急医療情報キットは要らない?
2025年10月から、全国の消防本部で「マイナ救急」が始まりました。救急隊がマイナ保険証を読み取り、その場で医療情報を確認するしくみです。
便利な制度ですが、救急医療情報キットが要らなくなるわけではありません。マイナ救急で確認できる情報と、救急医療情報キットに書いておける情報には違いがあります。
マイナ救急でわかること|過去5年分の受診歴や薬の情報
総務省消防庁によると、救急隊が見られるのは次の情報です。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 診療・薬剤情報 | 過去5年分の受診歴、薬剤情報、手術情報など |
| 特定健診情報 | 血圧、血糖、肝機能、心電図、既往歴、生活習慣など |
| 救急用サマリー | 過去3か月の受診歴と薬剤情報、過去5年分の手術情報など |
意識がない場合でも閲覧できます。消防庁は「傷病者の生命や身体を保護する必要があれば、同意なしに医療情報を閲覧することがあります」と案内しています。暗証番号の入力も原則いりません。
家族の連絡先と5年以上前の病歴は救急医療情報キットで補う
マイナ救急では、家族の緊急連絡先は確認できません。
また、5年以上前の病歴や手術歴は、十分に把握できないこともあります。
医療の現場では、今回の症状と関係しそうな病気がないか、過去までさかのぼって確認することがあります。救急医療情報キットにこれまでの病歴を書いておけば、家族がその場にいなくても情報を伝える手がかりになるでしょう。
もう一つ大切なのが、マイナ保険証を確認できることが前提だという点です。カードが手元になかったり、保管場所が分からなかったりすると、マイナ救急を利用できない場合があります。
その点、救急医療情報キットは冷蔵庫など保管場所を決めておけます。マイナ救急と併用すれば、それぞれで不足する情報を補いやすくなります。
救急医療情報キットと高齢者見守りサービス|親の異変に備える
救急医療情報キットを用意していても、親が倒れたことに誰も気づかなければ、救急要請にはつながりません。
とくに一人暮らしや、日中ひとりになる時間が長い親では、「異変に気づく仕組み」も別に考えておきたいところです。
厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」では、高齢者世帯のうち一人暮らしは933万5千世帯と最も多くなっています。
親が高齢となり、
- 「最近、転倒が心配になってきた」
- 「体調を崩すことが増え、通院の回数も増えてきた」
と感じ始めたら、高齢者見守りサービスも備えの一つです。
センサーで生活の変化を確認するものや、必要なときに駆けつけを頼めるサービスなどがあります。
救急医療情報キットと見守りサービスでは、備える役割が異なります。親の暮らし方や心配ごとに合わせて、必要な備えを組み合わせて考えてみてください。
親に合った見守りサービスの選び方については、下記の記事で詳しく解説しています。
現役看護師が徹底解説|高齢者見守りサービスおすすめ5選

救急医療情報キットについてよくある質問
- 救急医療情報キットはなぜ冷蔵庫に保管するのですか?
-
どこの家にもあり、救急隊がすぐ見つけられるからです。作りが丈夫で災害時も中身が残りやすく、家族以外が開けにくい点も理由にあげられています。保管場所は冷蔵庫の中、内側のドアポケットです。
- 救急医療情報キットは手作りできますか?
-
作れます。500mlのペットボトル、A4のクリアファイル、輪ゴムがあれば作れます。チャック付きのビニール袋とマグネットで作る方法もあります。材料は100円ショップでそろいます。
- マイナンバーカードがあれば、救急医療情報キットは要りませんか?
-
マイナ救急で分かるのは、過去5年分の受診歴と薬です。アレルギーや家族の連絡先は含まれません。カードが見つからなければ使えないので、両方あると安心です。
- 救急医療情報キットはどこでもらえますか?買うこともできますか?
-
多くの自治体が無料で配布しています。対象は65歳以上など自治体ごとに決められています。市販の容器を買って作ることもできます。中に入れる用紙は、公開している自治体のホームページから印刷できます。なければ手書きでもかまいません。
- 目印のシールはどこに貼りますか?
-
玄関ドアの内側の上部と、冷蔵庫の扉の外側です。玄関の外側には貼りません。高齢者のひとり暮らしだと外から分かり、犯罪や悪質な訪問販売を招くおそれがあるためです。
まとめ|救急医療情報キットで親のもしもに備えよう
高齢の親がそろそろ心配と感じたら、救急医療情報キットを準備しておきましょう。
救急医療情報キットは、持病や薬、緊急連絡先などをまとめて備えるものです。
緊急時は、本人や家族が落ち着いて情報を伝えられるとは限りません。必要な内容をあらかじめまとめておけば、救急時の情報共有に役立ちます。
自治体によってはキットを配布しており、配布がない場合でも身近な材料で手作りできます。
- 持病やこれまでの病歴
- 飲んでいる薬(お薬手帳のコピーでも可)
- アレルギー
- かかりつけ医
- 家族などの緊急連絡先
- 必要に応じて介護に関する情報
作ったあとは、薬や通院先が変わったタイミングで内容も見直しましょう。
あなたとあなたの大切な親のために、今日からできることを一つ始めてみませんか。
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